モモタローズ

昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが、ものすごくたくさんいました。

お爺さん達はみんなで競うように芝刈りをしていました。
お婆さん達が川沿いにずらーと並んで洗濯をしてたら、
上流から大きな桃が、ありえないくらい大量に流れてきました。
「どどどどどんぶらこぉ〜〜〜、どどどどどんぶらこ〜〜〜、どわ〜〜」

一瞬で「これは金になる!」と判断したお婆さん達はわれ先にと桃を奪い、
それぞれたくさん抱えて家に戻りました。

その後、村の各家庭では桃太郎が続々と誕生しました。

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月日は流れ、桃太郎たちはみんな、お爺さん・お婆さんに鬼退治に行くように強制されました。

「なんだかわらないけど、仲間が必要だ」
桃太郎たちは仲間を探しました。
「きびだんごをあげるので鬼ヶ島に鬼退治にいきませんか?」

しかし、サル・イヌ・キジはきびだんご程度じゃ動きません。
鬼と戦うのはリスクが高いです。それに桃太郎はたくさんいます。
サル・イヌ・キジはいい条件を提示する桃太郎と一緒に行くことにしました。

桃太郎たちは、いろいろな条件を考えました。

「『きなこ餅』でどうですかー?」
「『きゅうりの漬物』では?」
「『絹のパジャマ』はどうでしょう?シルク100%ですよ」

誰から始まったのか、「き」で始まるものならなんでもいい的な流れになってます。

「『きらら397 20kg』でいかがですか?。話題の『金芽米』もありますよ〜」
なかなかやるな、米屋の桃太郎。

「『北島三郎の未発表曲入りCD』です。今ならなんと、この『桐の箱』に入ってまーす。」
「『究極の掃除機』です。いまなら『金利・手数料』は当社が負担しますっ!」

なんかテレビショッピングになってます。

大富豪の家に育てられた桃太郎が金に糸目をつないで「『金の延べ棒』をあげよう」とか言ってます。

他にも、あたりを見回しながら、
「き、き、き、えーっと・・・『きのこ』!これ滋養強壮の効果がすごいから!これで仲間になってよ」
って適当なこと言って、その辺に生えてるモノで誘っている桃太郎もいます。

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そんなわけで、桃太郎たちは一斉に鬼ヶ島に向かいます。
各組がそれぞれ小船に乗って港を出ます。

でもなんか船の上のメンツがおかしいです。
桃がたくさん流れてきても、里にはそんなにサル・イヌ・キジはいなかったのです。
猫、にわとり、チンパンジー、ペンギン、あとなんだ、ライオン、パンダ、コアラ、・・・もう、ありとあらゆる動物がいます。
ナマケモノなんて見るからにやる気ありません。
ゾウを乗せた一行の船は、一方に傾いています。あっ、水入った。
あっ、あ、あーー、あーー・・・。船沈んじゃった。
えっ?ゾウって泳げるの?びっくり。
まぁいいや。
向こう側の船の上ではは全員、笑いが止まらなくなってます。
あーあ食べちゃったんだね、あれ。
違う船には『岸辺シロー』を抱えたゴリラもいます。

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さて、上流から大量に流れてきた桃は、最終的にはみんな立派な桃太郎に育ち、
ひとりも欠けることなく、大軍団となり鬼ヶ島に着きました。
「これだけの戦力で攻めれば、鬼なんてすぐやっつけられるだろう。」

・・・

上陸した途端、突然、その場の空気が変わります。

・・・

勘の鋭い人はもうわかりましたね。

そう。
ものすごい数の鬼が待ち構えていたのです。
モモタローズの比ではありません。

「まじかよ〜〜〜〜」

世の中そんな甘くないってことです。


モモタローズは鬼にわびを入れて、すごすごと帰ってきました。
大富豪に育てられた桃太郎は鬼に一筆書かされ、
先々代が一代で成した家の財産をすべて鬼に譲渡することになりました。
もちろん仲間の『金の延べ棒』も没収されました。


モモタローズは里に戻り、反省しました。
「最初から鬼の財宝を当てにしていたのがダメだったんだ・・・」
心を入れ替えて真面目に労働に励みました。

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それから5年後。

鬼は一生困らないほどの財産を手に入れたので、その後、里を襲うことはありませんでした。
過疎の村には若者の力強い労働力が加わり、村民はみんな豊かに平和に暮らすことができました。


めでたしめでたし。